カテゴリ:2016 日本一周( 150 )

 

九州編 福岡案内

ふぁんすぃーが長崎から先へ旅立った後は、青森ねぶた祭りで一緒だった関西のKさんと四国のTさんが沖縄で旅を折り返して福岡へやってきた。

二人は早朝から佐賀バルーンフェスタを見に行っていたと言うので、糸島市の海沿いで待ち合わせて東に向かうこととしよう。
最近はインターネットや携帯電話を介してご当地でしか知りえない情報を交換できるので、なんて簡単なんだろうと思う。
グーグルマップの位置情報を送信して、”ここへ行く”をタップすればナビしてくれるのだ。

ナビもない、長野県の国道で停車しては買ったばかりのツーリングマップを広げ、確認していたあの頃が懐かしい。
太陽の位置を頼りに、風向きを頼りに、川の流れを頼りに。
今自分がどこに向かっているのか感じながら進む乗り物だった。
現在の私達にはどこに向かっているか判らなくても目的地に到着してしまう。

そこにやりがいがないと言えばない。



晴天なので、私も約一週間振りに乗って案内することに。

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午前中の糸島は海沿いの飲食店やカフェもまだ開いていない店舗が多く、二人が来るまでベンチに座って日光浴していた。
砂浜で犬の散歩をする夫婦。
ドライブの車がたまに通るぐらい。
バイクはほとんど見ない。

波の音だけを聞いて、太陽をまぶしがって、ひとりでじっとしている時間は何にも換えがたく至福だった。




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そしてマフラー音と共に現れた二人。
私の行こうとしていたカフェが定休日以外の休みを取っていたため、急遽向かいのカフェへ。
ロンドンバスが停車してあるので二階へ上がり、「ここ寝れますね」トークに花が咲く。
しかし窓が開かないようでちょっと暑い。

外のベンチにて談話する。
こういうときの会話って言うのは、何を話したかあまり覚えない。

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続いて博多埠頭のタワーへ。
無料で上れるので最近はお隣の国の観光客だらけ・・。
意外と眺めがいいが、Kさんは高所恐怖症らしく窓から一定の距離を保って歩く。笑


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ふぁんすぃーの嵌ったクレーントラップ(操縦してみよう、と書いてあるのに勝手に映像が進む画面)にTさんを乗車させる。
まんまと引っかかるのであった。

カフェで軽く食べたせいか、そのあと変な時間に空腹になり長浜ラーメンを食べる。

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そして陸繋島の志賀島へ。
埋立地の人工島から伸びる橋を渡ると、海水面に夕日が接近してくる。

眼前に広がる映画のワンシーンのような景色に、飛び込んでいくこの瞬間が最高に気持ち良い。

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島の頂点にある展望台から地形を眺めると、PM2.5か黄砂のせいで水平線はぼやけてしまい、やけに幻想的な光景が広がるのだった。



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降りてきた先にある砂浜にて太陽の沈むのを見届け、東を目指す二人を見送った。







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by aroundjapan | 2016-12-24 16:28 | 2016 日本一周 | Comments(0)  

165日目 旅の終わり

おはようございます。

今朝は福岡県内の叔母の家で目覚め、田川の石炭博物館へ行くことに。
これまで日本中を見て歩いた割には、地元の事を知らなすぎる気がしたからだ。

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チロルチョコの松尾製菓のあたりが田川だ。
屋外の無料展示を覗く。
大正時代の炭鉱住宅を再現したものがあった。
今年91歳になる祖母が産まれたのが大正が終わる年だから、今見ている文化は100年ほど前のものということに驚く。

この蝋人形は、近付くと突然筑豊弁で喋り出すが、他地域から来た観光客は恐らく聴き取れないし、怒っていると思うかもしれない。

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いまや全国的に知られている炭坑節は、ここ筑豊炭田に端を発する。
筑豊炭田は江戸時代から採掘が始められ、戦前日本で最大の石炭採掘地域だったと言われる。
北九州の八幡製鉄所方面に鉄道が延びているが、もちろんこの時代の遺産である。
現役運行で自身も乗ったことがあるが、いつか別の折で紹介したい。

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記念館の本館は改装期間中なので、広場に設置された石碑を見て散策。
福岡もすっかり秋になってしまったようだ。

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左奥に見えるのが、石炭を採掘した時の不純物を取り除いて集積したもの。
通称ボタ山。
小さい頃から智恵子抄よろしく、指さして「あれがボタ山」と言う風に聞いていた。
日本一周して、改めて見ると筑豊炭田は全国稀に見る規模なのだなと30歳近くなって自覚。

実は私の通っていた大学も、この炭田の成功によって創立された教育機関である。
今原点に立ち返ってこの地に生まれたことを意識せずにいられなかった。
本館は見ることができないので、工事の終わる来年また来よう。



1時間弱で福岡市内へ。
もういっそのこと日本一周中はぶらさげたまま家の前まで来た。
インターホンで母を呼ぶ。
おかえり、と言う母は笑顔でヘルメットを被ったままの私に抱擁を交わした。

関わってくれた人々、家族、友人、先輩・・そして愛車の2006年式W650へ。
感謝の気持ちでいっぱいだ。
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2016年5月4日から始まった日本一周旅、これにて完了。
ここまで読んでくださった皆様、コメントをくださった方、心配してくださった方、ありがとうございました。




走った距離
県内某所→田川石炭記念館→県内某所→福岡市内
71km

使ったお金
給油 新出光¥1260


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by aroundjapan | 2016-11-09 15:02 | 2016 日本一周 | Comments(6)  

164日目 涙があふれそう

おはようございます。

朝起きて、ブログを書いていると襖が開いた。
女将さんは、今朝の地域イベントに出展するために作った栗おこわとコーヒーをお盆に載せていた。

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私の朝食がないのを心配して、売り物にする予定のものを「食べて良いよ」と持って来てくださったのだった。
申し訳なかったがお礼を言い、早速頂いた。
温かいおこわと栗のホクホクした甘さを口に含み、大切に噛み締めた。

わずかな宿泊料では有り余るほどのサービスを受けてしまったので、せめてもの感謝の気持ちと思い、店先で栗おこわと共に売られているおはぎを購入した。
また来てね、と見送ってくれた女将が元気なうちに再訪したい。


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宿の近くには名物の饅頭が売られていた。
今朝は晴れらしい。

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山口の風景、夏みかん色のガードレールと石州瓦の屋根。
とりとめも無いと思っていた山口県。
すっかりこの地が好きになってしまった。

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快晴の角島大橋。
旅の初日であまりの渋滞に立ち寄ることを諦めた。
学生の頃から何度か来ているが、W650で乗りつけるのは初めてだった。

W650と連れ添って五年。
ようやく見せることが出来た風景だ。

こんな絶景見せたらどんな顔するんだろう?なんて思いながら走って来た。

旅人やライダーと一通り会話を楽しんだ。

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下関は天ぷらの名産地。
大好物であるのでUターンしてまで購入。
揚げたてとお土産で、後悔のないよう欲するまま買おう。
まだほんのり温かいと言われた玉子天は、玉子を囲むように枝豆やキクラゲが詰まっており天才的な美味しさだった。
これがひとつ200円でお釣りが来るのだから、素通りしている人たちの気が知れない。

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家はもう、すぐそこだ。
叔母も家族もみんな天ぷらが大好物だ。血は争えない。
惜しげも無く大量の天ぷらを買い込んだ。


見慣れた191号線を引き続き下りていくと、料金所がある。
100円を支払うと、8年前ハタチだった頃の記憶が蘇る。
重心の高く軽いバイクに跨っていた私は、狭いトンネルを車体のそばに感じた。
緩くカーブする壁が、スピードの世界で自分に迫って来るようで恐ろしく感じた。

あの時の恐怖など今はもう無い。
忘れてしまった訳では無い、今もたくさんの出会いと別れと思い出を抱え、その門をくぐった。
このトンネルを抜けるといよいよ福岡県だ。

・・・旅が終わるのだ。
あの頃と同じスピードの世界で、自然と今まで出会った人たちの顔が浮かんでは消えた。
トンネル最深部に近づいているせいか、息が苦しい。
胸にこみ上げるものを必死で抑える。
涙があふれそうだった。

ついに抜け切った。
あまりにもあっけなく、目の前にあるのは見慣れた交差点だ。
左へハンドルを切る我に帰り、なんだまだ帰りたく無いんじゃないのかと自嘲する。

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学生時代ぶりの平尾台を走った。
こんな所だったか、記憶が曖昧だった。
当時はタンデムで連れて来てもらった。
誰も居ない溜池の外周をタイムアタックしたのも良い思い出だ。

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空は快晴で、すっかり秋を思わせる。
ここでは当時、同級生がロケットを宇宙に向かって飛ばしていた。
もちろん研究としてだ。

もう明日が165日目で旅の終わりの日だった。
悔しいような、安堵するような、文章にはし難い感情を持て余していた。

叔母のところに到着すると、祖母含めみんなが喜んで歓迎してくれた。
これでもう引き返せない、本当に終わりに向かっていく。



走った距離
俵山温泉 みかど屋旅館→県道281→R191→県道275→角島大橋→県道275→R191→奥野寿久商店→R2→関門トンネル→県道28→平尾台→県道64→R201→福岡県内某所
189km

使ったお金
水¥110
宿代¥3000
おはぎ¥200
天ぷら¥310
天ぷらお土産
関門トンネル¥100

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by aroundjapan | 2016-11-08 08:30 | 2016 日本一周 | Comments(0)  

163日目 幾時代かがありまして

おはようございます。


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よく眠れず、今朝も目覚めは最悪。
山口駅の近くにて気になる施設が二つあるが、出だしが遅いので中原中也記念館のみ行くことにした。

中原中也はここ湯田温泉の地にて明治末期に生まれ30歳で夭逝した詩人。
彼は、否定や破壊のダダイズムとフランス抽象詩の影響を受けていたらしい。
フランス語を習うため、日本大学を中退しアテネ・フランセにも通ったとか。
中也と言えば山高帽を被り小動物のように目の丸いモノクロ写真の印象だが、あれはヴェルレーヌの描いたランボォの扮装であるらしい。
今でいうコスプレ…。
中学生みたいにランボォを敬愛していたのだろうな。

ランボォは他にも数え切れないほどの文化人に影響を与えている。
文学界では三島由紀夫、音楽界ではボブ・ディランなど類を挙げればキリがない。
研究記の著者である西条八十は私の母校の校歌を作詞している。
詞がランボォを継承しているのだとしたら、私がここにいるのは数奇な巡り合わせだ。

幾時代かがありまして から始まるサーカス。
彼の作品で最も印象的であり、記念館の二階特別展でもサーカスに纏わる展示がされていた。
在りし日の歌は生まれて間も無く亡くなった愛息子の事を想って書いたそうだ。


以下、心に残ったキーワードを抜粋しておく。
真夏の燃ゆるような倦怠の太陽を道連れに
胸に沁みこむようなさびしさとキリモミのような痛快さ
坂口安吾、竹久夢二、谷崎潤一郎、澁澤龍彦
神田

こころままなる人間は、いつでも海が好きなもの!



サーカスの展示室では、昼光色の照明に照らされたモビールが音もなく揺れていて、この響きがよく似合う。
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

頭の中では中也と同じ、ハットを被った七尾旅人のサーカスナイトが延々と流れていた。


館内撮影禁止だったため、入口で販売されているカプセルのガチャガチャを購入。
彼が学生の頃刊行した末黒野の豆本が出て来た。

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中也を満喫した後は、市内に七箇所設置されている足湯のうち、記念館の警備員に勧められた井上公園へ。

湯が熱すぎて足が真っ赤になった。
車で旅行に来られている福山のご夫婦とお話をする。

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弁当を買って記念館の前にあるテーブルで食べ終わり、バイクに跨った所で良い色の三毛猫が歩いた。

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もう一度山越え、秋吉台展望台へ立ち寄る。
前述の通り小さい頃しょっちゅう来ていたので、地元のような気分。

山口県は、実は数年前にも大学時代の研究室旅行で堪能していた。
川棚で瓦そばを食べ、焼くと綺麗なグラデーションが出る萩焼きのお茶碗を手作りし(母が未だに使ってくれている)、どこかの海岸で花火をしたあとバンガローに泊まり、秋芳洞ではない方の鍾乳洞へヘルメットを被って入った。
長門温泉のあと、湯田温泉にも来ていた。
それらの日々は記憶の中で輝いて見える。

家族の都合ですぐには家に帰れないこの二、三日の間に山口県を再発見出来たことが嬉しい。

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Yちゃんに聞いた元乃隅稲成へ来てみた。
テレビで放映されたそうで、休日の今日は特に県外ナンバーが多い。

旅に出て2日目の朝、ここのすぐ横の山の上にある千畳敷に来ていた。
私は地元民に近い立場だが、このような観光地があることを全く知らなかった。
大抵の観光客は、鳥居の上に設置された“日本一高い位置にある賽銭箱”に小銭を入れに訪れるそうだが、この日は休日ライダーが騒いでいたため逃げるように去った。
大勢で騒いでいるライダーがやはり苦手だ。


長門温泉は前にも入ったしな、と彷徨っていると、とある温泉地に流れ着いた。

実家には予定通り明後日帰って来いと言われていたので、ここから福岡県下にある叔母の家に今夜泊めてもらおうと電話をするも、そこに居るなら泊まって来なさいと強要された。
なぜかと聞くと、私の父方の祖父と母方の曾祖母が湯治に通っていた湯らしい。
リウマチなどに効く泉質は西日本一だとか。

なるほど、それを聞いてここに来たのも何かの因縁だと思い、泊まることに決めた。
と言ってもそれほど優雅な旅館には泊まれない。

しかしこの古い温泉街には観光案内所は無さそうだし、インターネットで検索しても何もヒットしない。
まさか一軒一軒素泊りはいくらか尋ねて回る訳にも行かない。
考えあぐねて公衆浴場の受付に立って居る、親の年齢に近そうな女性に伺うと、私が温泉に浸かって居る間に各所電話をかけて訊いてくださると言う。

なんとありがたい事だろう。
まだ宿は決定していないが、にわかに喜んだ私は彼女に命運を託して湯に浸かった。
泉質に特徴は感じなかったが、昔から言われているほどの効能があるのは確かだろう。
湯から上がると、受付の女性はある旅館の名と電話番号、素泊りは三千円と縦書きでメモしてくださっていた。

三千円!?
信じられなかったが、電話をして見ると本当のようだ。
即決した。
あらかじめ場所を調べ、共同駐車場に停めていたバイクを宿の前に移動させる。
こんなに安く泊まれる宿があるなんて、自分はこの地に導かれたに違いない。

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この温泉街は昔からの景観を守り続けていて、狭い路地にぎっしりとマッチ箱みたいな宿が軒を連ねていた。

私の祖父や曾祖母もこの地を踏んで、川のせせらぎを聞いたのだろうか。
湯上りに浴衣に丹前を羽織って、散歩したのだろうか。
私が生まれる前にこの世を去った、写真でしか見たことの無い二人と、初めて繋がれた気分がした。

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宿に到着し、還暦は越えているであろう女将さんが布団を敷いてくれるのを手伝う。
寒くなって来た室内で小さくなっていると、お茶受けに旦那さんと食べていたであろう小さいシュークリームを持って来てくださり、お茶も淹れてくれた。
安く泊まっているのに申し訳なかった。

寒さに弱いので食事に出るのが億劫でいると、女将さんが「今から風呂に行くけど、あなたは夕飯に行かないのか」と訊いて来た。
それでやっと重い腰を上げ、一緒に行くことにした。
並んで歩くと女将さんの小ささが目につく。

女将さんを風呂に見送ると、この界隈に一軒だけある食堂は隣だった。
コンビニも15キロほど行かないとない場所なので、食堂の存在はありがたかった。
鶏そぼろの三色丼と、長門は焼き鳥が有名だと言うので銘酒獺祭の酒粕に漬け込んだという長州焼き鳥を注文。
酒は苦手だが、焼き鳥も美味しかった。

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店を出るとすっかり日が沈んでしまっていた。
少し寒いのでパーカーのフードを被り、写真を撮りながら帰った。
これほど良い場所なのに、客が少ないのが寂しいなと思う。

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食堂で時間をかけて食事したにも関わらず、湯上りの女将さんが住民の女性と喋りながら歩いて居た。
私に気が付いていないようだったので女性と別れた女将の前でフードを脱ぐと、「あら、あなただったの。男性かと思ったわ」と笑われる。
やっぱり…と思い私も笑いながら、同じ門をくぐり、それじゃおやすみと言われると、彼女は私の叔母か肉親なのではないかと錯覚した。

おやすみなさい、と告げて部屋に入る。

今日の夜は、たぶんずっと忘れないほど愛おしくなった。



2016.10.13
走った距離
快活山口大内→中原中也記念館→井上公園→R435→県道242→秋吉台展望台→県道28→R191→県道34→広域農道→元乃隅稲荷→R191→県道34→俵山温泉 町の湯、俵山本陣、みかど屋旅館
124km

使ったお金
ネカフェ¥1705
中原中也記念館¥
豆本¥200
弁当¥388
そぼろ丼、焼き鳥¥800
給油 長門¥1177


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by aroundjapan | 2016-11-07 07:00 | 2016 日本一周 | Comments(0)  

162日目 自販機めぐりその2

つづき
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3軒目の後藤商店は、年季の入ったうどんそば自販機、うどんラーメン自販機、お菓子の自販機、ポテトチップス専用回転自販機、お惣菜自販機、スケルトンの100円ロッカーと何でもありだ。
さきほどの肉うどんで満足していたが、気分が乗るのを待ってラーメンを食べた。

だが自販機ラーメンに使用されている厚みのあるソフト麺はどうも私の口に合わない。
麺とスープがどうにも馴染んでいない。
コウランのラーメンほどぬるくないので、まだ食べられた。
唯一チャーシューはいい線を行っていた。
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ゲームコーナーの筐体は殆どすべてが眠りに入っていた。
おそらく永遠の眠りだろう。。
スロットマシンは明かりがついていたが、無音だった。
それ以外に実働の、景品の当たる機械から流れている昔聞いたような陽気なゲーム音が物悲しい。
景品には、なぜかミニチュアのパイプ椅子がぶら下がっていた。
どうやって遊ぶのだろうか。


走ると間もなく山口県に入った。
ゴールの隣県だと言うことを、見慣れた字面に否応なく意識してしまう。

昨夜は眠りが浅かったので、道の駅の休憩スペースに腰掛けて少しの間仮眠をとった。
施設の海側には、強い日差しを避けるテラスがあったのでソフトクリームとカフェオレを持ち出す。
食べ終えると満腹になったので、人工に整えられた海岸で散歩をした。

ツーリングの合間に、太陽の光を受けて煌く海を眺めるのが好きだ。

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小さいころから何度も来ている萩市にて、世界遺産の反射炉を見た。
初めて見ると思うが、当然この国道のそばに昔からあるのだから、もしかすると物心つく前に見たことがあったかもしれない。

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秋吉のカルストロードへ。
ここも小さい頃親戚や家族に連れられてイヤと言うほど来ていた記憶がある。
鍾乳洞は透明なエビや蝙蝠が見られる動物園のように思っていた。

今になって、私の周りの県外ライダーが「カルストだ何だ」と騒いでいるのが少し可笑しい。

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山陰地方に入ってから何度となく見ているススキ。
風が強いのは土地柄だろうか。
それにしても視界にやたらと入ってくる外来種のセイタカアワダチソウが良くない。

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山口は地図で見ると意外にも広く、中部は特にのどかな田園風景が広がっている。
あぜ道にカブと軽トラで乗り付けた農家のご夫婦はおそらく汗を流しているのだろう。
あちらに届くよう、大声を張り上げて応援したくなった。

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道端に老人男性が寝転がっていた。のどかが過ぎる。
※アート作品のようです。

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晴れた今日は周防灘に沈む夕日を見に来た。
この海岸へ来たのは学生時代ぶりだ。

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今日最後の自販機めぐりは山口市の長沢ガーデン。
うどんそば自販機二機、屋台でもたこ焼きやカレーが売られていて、さらに温泉もある。
陸橋を越えてすぐ左でいささか入りずらいものの、ドライブインとして立派に機能している。

夕食代わりに天ぷら蕎麦を購入してみた。
ビニール袋に包まれた割り箸をウン10年ぶりに見た気がする。
箸でひっくり返すとゲソまで入っているかき揚げが登場。なんとクオリティ高い。

今日は300円とは思えない美味しさのうどんに二つも巡り会えて幸せだ。

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併設する温泉は放射性のもので、結果としては肌に合わなかった。
とにかくさっぱりしたので休憩室に行ってみると、宿泊客のカラオケ大会が始まっていた。
観客は私を含め3人。
年配の男性はなぜか立て続けに若い女性ボーカルと思われる流行歌を入力し、たどたどしくなぞるように口ずさんでいた。
酒の入った連れの女性が、その時代らしいアニメの曲を意気揚々と歌いはじめたので、その場を去った。

次回は屋台でポテトを食べて、宿泊2900円も利用してみたい。



その日の晩は、エチオピアの首都アジスアベバを連想する名称の道の駅で野営しようとした。
が、夜の早い時間に暴走族かぶれの若い少年たちが爆音で現れ、彼らが去り私は眠りに着いた。
その頃に、これまた爆音で音楽の一部を繰り返し流しダンスを踊る謎の女性二人組が現れた。

私も人のことは言えないが、公共の場所でやる事ではないだろう。
ちなみに私のバイクとテントは彼女らから見える位置にあった。
怒る事ではないが、迷惑に思う人がいることも知ってほしいと思い、声を掛け私が去ることにした。
深夜2時に運転し、市内のインターネットカフェに駆け込んだが、空調が寒くこちらも寝れたものではなかった。

山口県に対してもちろん悪印象など持たないが、むしろ逆に”変な人は出て行ってほしい”と思っていた。
九州のTVニュースは”九州・山口”と括られることも良くあるので、おそらく地元意識になってしまったのだろう。




走った距離
道の駅サンピコごうつ→R9→道の駅ゆうひパークはまだ→R9→日本海ドライブイン→県道171→R191→自販機のお店風花→後藤商店→R191→道の駅阿武町→萩反射炉→県道32→R490→県道28→県道242(カルストロード)→県道31→県道30→県道29→県道354→焼野海岸→県道354→県道215→R2→長沢ガーデン→R2→県道212→道の駅きららあじす→県道212→R9→快活山口大内
326km

使ったお金
肉そば¥300
おにぎり¥130
ラーメン¥350
道の駅阿武町 ソフト、カフェモカ¥350
天ぷらそば¥300
風呂¥390
風呂ロッカー¥100
スポーツドリンク¥130
給油 益田¥1183

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by aroundjapan | 2016-11-06 09:25 | 2016 日本一周 | Comments(2)  

162日目 自販機めぐりその1

おはようございます。

朝5時にすぐ隣で咳払いをする男性が。
これは起きろという不可視の圧力だと思い、さっさと撤収作業をしている私に彼は「ん、そのマットはエアーなんだ?」などと訊いてきた。
周りには車中泊の夫婦が1~2組いるようだったが、この男性は単独だった。
もしかしてただ話したかっただけなのだろうか。
反射神経や正常な感覚が機能していない寝起きのうちに、見知らぬ人と話すのは避けたいので適当に相槌を打ってごまかす。
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逃げるように走ってきたのは、道の駅ゆうひパーク浜田。
眼下に日本海の漁港が広がる。
今朝も晴天だ、漁港関係者の皆さん新鮮な海産物を届けてください。
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道の駅のピクトが面白かったので撮影。
トイレで考え事している人等、諸所突っ込みたいところがある。
施設内にはスケート場やフェリー船内でよく見るホットスナック自販機と、カップヌードル自販機が並んでいた。

これは仕込まれたシーンのように思える。
なぜなら今日は自販機巡りをするつもりだからだ。
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一つ目に到着、ドライブイン日本海。
景色もいいとの噂でぜひ来てみたかったところだ。
というか国道9号線上にあるため大抵の旅行者は店の前を通るのではないだろうか。
圧倒的レトロなフォントが、斬新な斜め屋根に張り付いている。
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店内はなかなか見ごたえがあった。
カップヌードル自販機には何となく無理やりどん兵衛が並べてある。
ベルトコンベアで落ちてくるおにぎりに、うどんそば自販機。
ロッテのグリーンガム(この辺ももはや希少)、大塚製薬ソイジョイの自販機。

次の店に期待をしているのでまだ食べない。
ただし小腹が空いたので持っていた果実チップを食べる。

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目の前には9号線のすぐ海側を山陰本線が一両編成で走っている。
腰掛けて眺めていたい。

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2軒目は自販機のお店 風花。
店構えが可愛らしくデコレーションされていて、入りやすい雰囲気。

店主の手書き?と思われる水彩画も掲示されていた。

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”お米は安心安全島根米”だそうだ。
こちらのカップヌードル自販機にも塩ラーメンが入っている。

調べたところによると、風花の肉うどんの評価が高いので頂いてみることにした。
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麺の量に見合った肉の量、かまぼこ二つ、ネギまで載っている。
これは美味しそうだ。
少し手が冷えているので容器の温かさが心地よい。
味はしっかりついているが濃すぎない昆布ダシは、身体を中から温める。
麺の食感は讃岐より柔らかく博多よりつるりとしていた。

ただのダシとは違うと感じ、探ってみると容器の底から2センチ程度の柚子の皮が出てきた。
これには痛く感動した。
柚子の皮をひとかけらずつ剥き取り、一枚一枚うどんの下にセットする店主の努力が見えるようだ。
香り豊かなダシを啜ると、その想像の中の姿は神々しくさえ思えた。ありがとう。
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食べていると煩い客がやってきた。
人間が怖いようだが、食べ物の匂いの出所をじっと狙っていた。
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住みついているのだろう。
誰も居ないので小さくしたかまぼこを投げるが、食べ物だと思っていないらしく匂いを嗅いだ後無視。
それなら、と口の中で小さく小さくした肉片を投げると嬉しそうに食べた。
ごみを散らかすとよくないので、かまぼこも食べられるんだぞとしつこく教えると観念して食べていた。

店主に感謝を伝えたいほど美味しかったので、店内の惣菜自販機でおにぎりも購入。
何度でも人を連れて来たい。
是非みなさんも行ってみてください。

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3軒目は後藤商店。
地図で見ると風花と近いように思えたが、実は10キロほど走る。



つづく

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by aroundjapan | 2016-11-05 12:30 | 2016 日本一周 | Comments(0)  

161日目 米子から出発

おはようございます。

今日はSさん宅から出発する。
Sさんは今日まで5連休取ってくれていた。
いつものように朝食を頂き、奥さんとハグして彼女を仕事に送り出したあと荷支度を始める。
バイクに荷物を取り付けるのをSさんが手伝ってくださった。

支度を終え、お茶を飲みながらなんとなく二人で話し込んでしまう。
「もう一日泊まって行ってもいいんだよ」と言ってくださるSさんに、これ以上甘えてられない。

10時を過ぎてしまった。
今日は二人でバイクに乗り、日御碕灯台まで一緒に行き別れる約束でいた。
重い腰を上げ、境港へ向かう。


駅前にバイクを停め、水木しげるの妖怪ロードと言われる様々な妖怪の銅像展示を見ながら土産屋を見物する。
鬼太郎グッズのタオルとステッカーを購入すると、スタンプラリーの冊子をサービスでくださったので予定にはなかったがスタンプラリーをすることになった。
沿道に設置されているスタンプを次々押していく。

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こういった恐ろしい妖怪が小さく銅像になっている。
森羅万象はサイズが小さいと何であろうが可愛くなることが判明。
チオビタドリンクはSさんに頂いたもの。

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少し歩いたところに妖怪神社があり、目玉の親父型の石が水の力でくるくると回っている。
参拝の仕方がわからないが、適当に拝んでおいた。

妖怪だらけの散策路を進んでいくと商店街に入ったので折り返す。
水木しげる記念館でトイレだけお借りし、出てくるとSさんは猫娘と戯れていた。
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記念写真を撮ってもらい、通りに戻ると途中で食べた味の濃い醤油アイスクリームだけでは耐えられず蕎麦を食べることにした。

その店には蕎麦しかなく、飯類は一切ない。静岡のわさびを使用しているそうだ。
この間しょうこさんと食べたわさびだった。
チューブのわさびよりまろやかで美味しい。
つゆまで蕎麦湯で割り、飲み干した。

スタンプラリーを集めてステッカーも貰えたので、再びバイクに跨る。
昼食後は眠くなるが、信号待ちで並ぶSさんは時折「名残惜しいから先へ進みたくないね」と言う。
そして数時間後にはSさんと別れることを思い出した。
実感が湧かない。

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タンクローリーの後ろについて走る私たちは、進んでは消えて行く色付いたケヤキ並木の風景の中に吸い込まれないように踏ん張っているようだった。
片岡義男の小説のワンシーンが浮かんだ。
Sさんは今なにを思っているのだろう?

宍道湖にさよならを言い、出雲大社の前を通過し、日本海を左手に見ながら日御碕灯台へ到着。
意外にも観光客は多い。
美保関とは違い、年季の入った土産物屋が軒を連ねていた。
灯台のある観光地らしくて良い。



灯台は海抜より先端までの高さが日本一だそうだ。
200円払えば登れるので挑戦することにした。
靴を脱いで灯台の螺旋階段を登るのは初めてだ。
数十段登ったところでSさんは息苦しそうにしている。
なんとか登りきる頃にSさんは「私は高いところが苦手なんだよ」と言う。
それなら何故登ろうとするのだろうと思ったが、あとになって考えれば全て私を喜ばせようとしてくれたのだ。

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靴下のまま風に吹かれながら回廊に出ると、断崖に立つ人が見えた。
柵のないあちらの方がよほど足がすくみそうだ。

一周した後ゆっくりと階段を降りて、駐車場の前に置かれたベンチに座った。
Sさんは奥さんの作ってくれたドーナツをポーチから取り出し、私にくれた。
私が食べていると「ちょうど国井さんみたいだ」と言う。
あまりもてはやすように仰るので、素直に喜べなかった。
影響を受けすぎですよ、と笑うが親ぐらいの年齢の見ず知らずの男性が私に対して、まるで実の娘のように扱ってくださることを改めて感謝した。

彼のスポーツスター1200に乗りたいというと、跨る姿を写真に撮ってくださった。
私も国井さんを初めて知った中学生の頃、スポーツスターに憧れていた。
高校時代、学校に話しに来てくれたスポーツスターに乗った牧師のサインをジャージの背中に書いてもらい、ファイヤーパターンのタンクを載せた車両の前で親友と記念写真を撮ってもらった。
彼に「私、スポーツスターに乗りたいです!」と言うと「じゃあチームに入ってね。」と言われたのを鮮明に覚えている。


30分ほど行った場所にある道の駅で解散しようということになった。
到着すると室内のベンチに腰掛け、海を見ながら1年半前に出会った時と同じようにココアを啜った。
目の前はガラス張りだが、一面に昼下がりの日本海が広がっていた。

あまり引き止めても、と目を細めて水平線を見つめる彼が仰るので駐車場で解散した。
彼は東に進み、私は一人で西に進んだ。
日が落ちていき、石見銀山に着く頃にはぐっと気温が下がっていた。
軒を連ねる石州瓦の赤色に、懐かしさを覚えると同時にもう地元の隣県ぐらいに入っている事を悟る。
今見ているのは、旅に出て二日目に見た光景と同じだった。

走りながら、頬の端に残っていた飴玉を引っ張り出すように、この数日間に数え切れないほど交わしたSさんとの会話を反芻した。
Sさんは私との出会い、私との時間を本当に大切に思ってくれていたのが態度と言葉からひしひしと伝わってきた。
私はその想いに応えられていただろうか?
米子から離れるほどに寂しさは募っていった。

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石見銀山の大森町を歩くと、誰も歩いていない日の暮れかけた山陰の集落はすでに一日を終える作業に入っているようだ。
簾で目隠ししてある扉の向こうでは風呂の音がしていた。
カコン、と言う音と湿った古い木の匂いが、通りにはみ出してきていた。

私の身体も冷えてきていたので温泉津温泉に向かう。
山を抜けると、水平線の近くが余りにも赤くなっているのを見逃せず漁港に向かった。
夕陽を追いかけて停車する。
港から投げ釣りをしている男性が「イカが釣れたよ。イカ。」と見せてくれた。
逆さ吊りになった模様のある寸胴なイカのヒレがうねうねと動いている。

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赤い色が濃紺の空に消えていくと、気温がさらに下がったので温泉に入った。

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温泉津温泉にある、薬師湯という1300年以上の歴史を持つ温泉だ。
浴室内では若い女性が大声で話しているので落ち着かない。
それでも、40度を越える湯の中で冷えた体がじわじわ温まっていくことに幸せを感じる。

ドライヤーも貸与してくれた。
2階は椅子を並べた休憩所になっていたが、隣のスペースには酸素カプセルのような怪しげな大きな機械が据えられていた。
経営者の趣味のようだ。

3階は屋上テラスになっていて、小さな星がいくつか現れ始めた紺色の空を背景に、せり立つ山を断ち切るようなオレンジ色の照明で照らされた温泉街が延びていた。




走った距離
米子市内→R431→水木しげるロード→江島大橋→R431→出雲大社経由県道29→日御碕灯台→県道29→くにびき海岸通り→道の駅きらら多伎→R9→県道321→46→石見銀山世界遺産センター→大森町→県道31→R9→温泉津港→薬師湯→道の駅サンピコ江津
191km

使ったお金
醤油アイス¥700
薬師湯¥350
コンビニご飯¥500?

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by aroundjapan | 2016-11-04 10:10 | 2016 日本一周 | Comments(0)  

160日目 美保関

おはようございます。

連休最後にとてつもない秋晴れが広がっていた。
しかしながら気温は少し低く、風が吹いているのでライダー二人は室内でまったりと朝を過ごしていた…。
私とSさんの話である。

昼食を頂いてからSさんは車を出してくれた。
向かったのは美保関。


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境港の海を眺めていると、鬼太郎のイラストが描かれたフェリーが隠岐の島へ向かっていた。
ぐんぐんノットが上がっていく。
鬼太郎は一反木綿に跨っているのだから、当然自動車より速い…。
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美保関に着いた後も、鬼太郎船は右から左へ流れて行った。
雲が低く秋を感じる晴れた空。

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島根半島には国引き伝説と呼ばれる神話がある。
美保関は島根半島の東端に位置するが、出雲を造った神は現在の島根と鳥取のあたりを見回して「小さくて物足りないな、どこかに土地が余ってないかな~」と仰った。
朝鮮半島の新羅に縄を引っ掛け、根本は大山に括り付け、掛け声を掛けながら引っ張り引き寄せると今の島根半島ができたという。
出雲側にも三瓶山を杭にして引っ張った、能登半島や新潟からも引っ張った、と諸説あるがそういうものらしい。

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その、神が作った半島でドローンを飛ばして空撮している年配の男性が居たので、珍しくてしばし見入ってしまった。
彼は同世代が昼寝や犬の散歩に興じる時間帯、巧みにiPadをタッチし、飛行物体を操り映像を録画していた。
コンピューターおじいちゃん。。

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こっ、これは。灯台ふもとの売店で、とんでもないものを見つけてしまった。
いつか父が友人から貰ってきた、どじょう掬い饅頭。
よくある白あんの饅頭にも拘わらず、ずば抜けて可愛いのだ。
饅頭に可愛いなどとは滅多にあり得ない感情のはずだ。
2個入りがあったので、お土産に衝動買いした。

灯台のある山を下りたところの美保神社にも参拝。
出雲大社とこちらをお参りすることで縁結び効果は倍増するらしい。
だがその謂われは不明。
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参拝も終わり、鳥居をくぐると港町に小さな商店が出ていた。
イカ焼きを売っているらしい。
手前の店に観光客が群がっていたので、利益の分配をと思い左奥にポツンとあるもう一軒の店を訪ねたが、その店の女性は立ち上がってご丁寧にも手前の店に我々をあっせんしてくれた。
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思惑は外れたが、左奥の店を通したおかげか、すぐにイカ焼きを手に入れることができた。
急いでいたので車内で食べることにしたが、食べにくくほとんどお持ち帰り。
口が串刺しになった干物も美味しそう。
港町は食べ物に事欠かない。
腹の出た猫が横切って行った。
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美しい秋空も暮れようとしていた。
空を見ながらSさんは焦り気味にハンドルを握っていた。

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到着したのは松江市街地の隣接する宍道湖のほとり、島根県立美術館。
菊竹清訓という建築家の作品で、ここから見える夕日は日本の夕日百選にも選ばれているそうだ。
これは期待が高まる。
夕日に間に合うようにSさんは車を飛ばしてきてくれたのだ。
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残念ながら夕日は雲に隠れてしまったが、宍道湖は美しかった。
山陰は地理的にも九州に近いと思っていたが、すっかり気温は低く、ここではすでに冬の足音が聞こえてきていると、そんな気がしたものだ。

夜は毎度、奥さんが手料理を振る舞ってくださった。
料理好きな奥さんはハキハキとしているが同時に女性的で、去年初めて電話口で会話を交わした時から憧れを感じずにはいられなかった。
最後にせめて出来ることをと肩を揉ませてもらい、Sさんが休んでから女同士深夜に話し込んだ。

いよいよ明日は米子から出発しなければいけない。



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by aroundjapan | 2016-11-03 08:44 | 2016 日本一周 | Comments(0)  

159日目 砥峰高原その2

つづき


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散策しているうちに日が差してきたので、ススキ特有の煌きを写真に収めておいた。
陽光を受けているにも関わらず、これほどの退廃を匂い放つ植物は他にないと思う。
あまり見ていると吸い込まれて気力喪失してしまいそうになる。

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Sさんが退屈そうに見えたので、髭を生やしてみたり、JR東日本のポスターにありそうな”尾瀬に行こう”という標語のポスター風に池の横の遊歩道で振り向きながら撮影したりして遊ぶ。


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晴れている空は一部だったが、ススキには曇り空が最も似合うし、さらに陽の光を受けている光景にも浸ることができて充足感に満たされた。

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帰路はお馴染み懐かし自販機、香美町のコインスナックふじへ。
内陸すぎて行く機会がないと思っていたが、まさか行けるとは。
テントはポップな色使いだが年季を感じる。

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店内に照明を設けようとしないところが、暮れかかった外部とのコントラストを際立てている。
自販機の店にはなぜか自動車から取り外した座席や、映画館の座席、電車の座席があつまる。
市民の生活を受容できなくなった固い椅子は、こういった店でどうしようもなく使えなくなる日が来るのをただ待っているだけのようにも思える。


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自販機の店ではよく見かけるこの回転式販売機。
値段設定と入れるものは店主の一存による。
しかし仕組みがよくわからないのだが、8秒間低速で回るのだろうか。
商品の種類が選べないな・・。

日が暮れてしまったが海岸の、サーファーの集まりそうなカフェ・デルマーにてマンゴージュースを頂き、帰路に就いた。
日本一周者もよく訪れるそうだ。



行った場所
米子市内→米子自動車道(久世IC)→旧遷喬尋常小学校→中国自動車自動(山崎IC)→R29因幡街道→道の駅いちのみや→県道6→県道39→砥峰高原→県道39→播但連絡有料道路(和田山IC)→R9→コインスナックふじ→cafe Del Mar→米子市内

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by aroundjapan | 2016-11-02 08:45 | 2016 日本一周 | Comments(0)  

159日目 砥峰高原その1

おはようございます。

私のぼんやり思っていた行きたいところをSさんの前で口にしたら、連れて行ってくださることになった。
米子から高速を使っても片道3時間ほどの場所。
本当に申し訳ないながらも、楽しんだ。


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ひとまず、国の重要文化財にもなっているという岡山・久世の旧遷喬尋常小学校へ。
映画 3丁目の夕日などでロケ地として使用された木造の校舎は、平成まで小学校として機能していたそうだ。
私の通っていた小学校は木造でこそないが、昭和初期の建築のため細部では似ているところが多々ある。
窓の施錠は真鍮製のネジ締り錠。
これを懐かしがる20代は稀なのではないか。
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なぜこれほど洋風な格好にしたのだろう。
二重勾配のマンサード屋根は東北の牛舎によく見られたが、何か意味があるのだろうか。

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昔は二人で腰掛ける机が一般的だったのだろうか。
Sさんとふざけて写真撮影。
私は授業中よく寝ていた気がする。
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天井の高い講堂は、見上げるとお寺のように格子模様で組まれている。
隅部はRのついた木で出来ていて、工業系のSさんと”あれは削り出しでなく、切断後に加工したのだろう”とつい制作目線で見てしまった。

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小学校の校庭部分は自治体の持ち物になっているらしく、産直市がやっていたので立ち寄った。
蒜山酪農-HIRU RAKU-が出店しているカフェオレとシュークリームを購入。
久しぶりに食べた好物のシュークリームが美味しかった。
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兵庫県に入り、道の駅で食料を仕入れた後県道を進んだ。
福知渓谷と名付けられたその林間部は、導入部こそ川の流れが見られたが進むほどに道が狭く、荒れていく。

以前いた職場もこういうところだったことを不意に思い出す。
この景色の向こうに住んでいる住民も居て、世間知らずの私は驚いたものだった。

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到着したのは砥峰(とのみね)高原、映画ノルウェイの森の撮影地でいつかは来てみたかったところだ。
まさか連れて来てもらえるなんて夢にも思わなかった、しかもススキの繁茂する時期に。

昼時なので、まずはこの景色を見ながら二人で仕入れてきたサラダ巻やコロッケをテーブルに広げ、食す。笑

腹を満たしたところで散策を開始した。
山間部なので、太陽も隠れてしまっている今の気温は割と低い。
上着を着てはいたが、お言葉に甘えてSさんの服を借りることにした。

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ただの開拓された高原にも見えるが、映画ノルウェイの森を見たことがある人にとっては感慨深い景色だ。
ヒロインの直子は、登場人物の中でもとりわけ儚い存在で、このススキ林の中で精神疾患を炸裂する。
悲しげで頼るところのない、行き場のない青春と若い命が枯れた草原の中で彷徨っているようだ。
心躍る場面のBGMはビートルズのノルウェイの森、それ以外、当時の若者の時代背景を受けて焦燥感を駆り立てるのはレディオヘッドのジョニー・グリーンウッドが奏でる音楽だった。
原作はもはやただの官能小説でしかないが、映画は音楽によって辛うじて良いものになっていると思う。

砥峰高原では大河ドラマも撮影されたそう。
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接近したところから撮影。
曇天でも違った魅力のあるのがススキ林のいいところ。

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ススキは何百年も姿を変えずに、花も持たずに、風に揺られながら人間の栄枯盛衰を見届けてきたのだろうな。





つづく

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by aroundjapan | 2016-11-01 09:12 | 2016 日本一周 | Comments(0)