鶴舞う形の群馬県

昨晩早く寝たら、快眠できて朝7時には目が覚めた。
煙草の臭いにも慣れてしまったのか(可哀想に)気にならなかった。

部屋で地図を眺めてルートを決め、朝食が簡単にあると聞いていたのでロビーに降りていくと、昨晩若旦那に受付してもらったときに視界の端にいた男性は彼の義理の父であり、先代の店主ということがわかった。
家族経営らしい宿の狭いロビーでロッキングチェアに腰かけた先代は、雇いの年配女性と友人のように会話しながら、あのバイクはトライアンフかと私に話しかけた。

良い方ではあったが、なんとなく高圧的なものを感じ取り、最後まで褒めておくことにした。
今から書くことは、感受性の高い旅人は共感するかもしれない。
くたびれた革ジャンとジーンズは、私を表す一側面に過ぎないと思っているが、世の中にはそれが全てだと見る人も多い。
多分私は彼に見下されていたのだろう。
コーヒーのお代わりを勧められたのでお願いし、彼が出掛けると一気にそれを飲み干した私も腰を上げた。
うん、まぁ善意の朝食サービスに免じて然るべきやり取りかもしれない。

どう立ち回る事で世の中が上手くいくか(自分の中で理屈が通るか)わかってしまうのもつまらない事かもしれない。
寿命の3分の1ほどをやり過ごしたいまの私は、図太い人間の方が人生を楽しんでいると確信しつつある。
だが彼らの楽しむ図太さは私の思う破滅、幻滅といったところだろう。

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雲のない秋空に救われる気分だった。
埼玉県を跨いだ先に、飛地のような群馬県館林市は存在した。
風が相変わらず強かったが、それを除けば川の土手はのどかで平和だった。
太田から館林に行く経路は、油断するとすぐ左折レーンや右折レーンになる道路が多く戸惑う。
いわゆる旅行者にやさしくない道路だった。
邑楽…という地名はなんて読むの、と思いながらたくさんの青看板の下を通った。

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近所で協力して稲刈りの始まった田圃の一角に南国の木が生えていたのが意味深だった。
しかし、秋の空はどうしてこんなに気持ちがいいんだろう。

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館林の駅前にあるうどん屋に来たが、私の目的のメニューは午後からの受付との事で、2時間弱の待ちとなった。
店員に時間の潰せる場所を聞くと駅の反対側にある日清製粉ミュージアムと言った。
駅の高架を登って降りていくと目の前は再開発工事中のようでほぼ更地だったが、駅舎の裏には立派な建物があった。
200円で見学できるそうで、以前から製粉のことをもっと知りたいと思っていたので迷わず入館した。

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一つ目の部屋には日清製粉の商品が並べられていた。
商品にはあまり興味がないので流す。

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小麦粉にまつわる知識を画面で紹介するコーナー。
他に誰も客がいなかったので、ひとつひとつつぶさに読み込んだ。

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画面にはイラストや振り仮名も入り、子供にもわかりやすいよう配慮されていた。
現代の日本で暮らしていると、米中心の生活を心がけていない限りは通常パンやウドンなどで、小麦を1日に一回は摂取していると思う。
それなのに無知すぎた、と思うほど初めて知ったことが多い。

例えば県別生産量。
一位はもちろん北海道だが、二位はなんと福岡県だそうだ。
寝耳に水。全く知らなかった。

日常なんとなく目にする大麦・ライ麦・燕麦(えんばく)の違いなど。
これらの違いを意識した事がないというのは、加工食品に慣れていて、自分の食べるものに興味がないという事だ。
他人と相対すると米よりパンが好きな人間だが、恥だと思った。

それと収穫量を何でも東京ドームに例える傾向はどうにかならないのだろうか。
東京ドームより1.5倍ほど大きい福岡ドームや、同じく野球チームの熱い名古屋ドームを擁する他地域の人は想像しにくいよ。

水車や風車、蒸気機関を利用してロール機を動かしていたこと。
もっと昔では、風を送って選別する農具でフスマを風選したこと。
ロール機と違い、石臼ではふすまも砕かれて選別しにくくなるため近代はロール機が発達した事。
ロール機の歯車は左右で回転速度が違うそうだ。
歯車はミクロン(10のマイナス3乗ミリ)単位で隙間の調整をするそうだ。私の専門ではないが工業製品の質の高さをうかがい知る。
粉末になった小麦は、シフター(ふるい)に掛けられるが、これは天井からしなやかな素材で吊られている。
どういう仕組みで動いているのかと思ったら、おもりの偏心で動いているそうで、これは携帯のバイブレーターと同じ機構だそう。
中身は単なる積層ふるいである。
単純な仕組みの方がメンテナンスが簡単でいいと思う。

また、パスタの種類で聞くセモリナは粗い胚乳のことだそう。
こうしてふるい分けされた粉末は、ピュリファイヤーで吸い上げ、空気の力で搬送される。
完成した小麦の粒は1〜200ミクロン。ちなみに比較で同単位のもの、髪の毛直径は70、スギ花粉は20、PM2.5は2.5だそう。
ふすまは主に人間の食べるものには含まず、家畜の餌となる。

色々知ったが、単純な機構の機械に日清製粉以下の何万人もの社員が支えられているんだなと感心した。

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施設を見渡しても相変わらず他の客はいないが、入場料の割に見応えがあった。

中でも面白かった展示方法が、選んだフィギュアを指定位置に置くと映像が流れるもの。
普通にボタン選択式でないところが凝ってるなと思った。
手話付きの映像なのも珍しかったし、工場の流れ作業の動作は袋詰めで揺れている動作はかわいいところがあったり、かっこいいと感じた。
子供に訴えかける仕組みにしてあるのかもしれない。

単純な機械でさえ、戦前はドイツ・アメリカ製の機械が優れていたみたいだ。
日本はやはり戦後から産業が始まったに等しい。

さらに施設を移動。
本館では日清製粉の起源を中心ビデオ学習できるのはいいが、座れなくて少々辛い。

1900館林製粉 正田貞一郎の話。
日清製粉の初代社長は横浜の旧日清製粉を吸収合併。
館林は小麦の生産地として東武とともに発展したのね。
鉄道の起源は輸送したいものの生産とともにある。
アメリカの効率、ヨーロッパの品質管理に感銘を受けた彼は吸収合併しながら国内の業務を拡大。
横浜・鶴見工場が東洋一の規模を誇ったとか。
戦後食料危機を乗り越えるため小麦を輸入、生産能力を回復して危機を救うため奮闘とあったが、なぜ生産力が低迷していたのだろう?
1949昭和天皇が鳥栖工場へ。
フジパン・神戸屋・ヤマザキなど私たちの知りえる製パン業者も登場。

1960年代にインスタントやレトルトが登場したそうな。
正田一族の典型的な世襲、とあるが皇后美智子妃は正田一族出身だったことを、私たち以下の世代は知らない人のほうが多くなっているかもしれない。
今いるここは、旧工場本館の部材を用いて建造されたそうだ。
しかし見学していても冷える。早く昼食にしたい。
もういい時間だったので切り上げて(記念品のお好み焼き粉はしっかり貰う)駅の反対側に戻った。

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名前を告げてあったので、店頭の行列をかわして着席。
もちろん注文は鬼ひもかわ 冷 麦豚 ¥950
平日だったが昼間は忙しいらしく、店員の女性がせわしなく動き回っていて慌ただしい。
うどんについてだが、薄くて平たい麺はもちろん、麦豚がむちゃくちゃ美味しい。
半熟卵と出汁を絡ませて食べるとうどん界の頂点級の一品となる。
麺を噛むのにあごの力が必要だが、持久力が尽きたところでちょうど食べ終わった。
好物しか入っていない丼で、この旅一番の大満足な食事だった。

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近くに菊竹清訓作の館林市民センターがあるそうなので見学に来た。
今日は秋晴れで本当に爽快。
館内を見させてもらったが、高齢の男女の社交場になっていた。
バイクのそばで青空をバックに写真を撮っていると、気をつけてとおじいさん。

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引き続いて宇都宮のWさんおすすめ、茂林寺。
こちらは参道両側に大量の狸がいる。
日本昔話の分福茶釜で有名な寺だそうだ。茶釜が今も収められているらしい。
茶釜キーホルダーの作りが細かいので購入。
参道の狸には端切れを用いた手作りの着物が着せてあり、写真右手には菊の花直売会ふうな催事がやっていたので地域密着型のお寺という印象を受けた。
狸のほとんどは温厚そうな顔つきをしていたが。
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怖すぎるんですけど・・。

出発後再び高崎方面を目指す。
群馬発祥のコンビニ?セーブオンにて休憩。
日本一周の際、新潟のキャンプ場そばにあったのを思い出し嬉しくなった。
ドリンクを購入するときに「セーブオンってどこのコンビニなんですか?」と店員に尋ねると、「群馬のコンビニですよ(複数人で嘲笑)」という対応をされたので聞かなきゃよかったと思った。
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オレンジハットというドライブインに寄り道。
チェーン店のようだが、看板にもかなりの年季が入っている。

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オレンジハット茂呂店。
この構図を見たら思い出すかもしれないがゲームの景品は大人のDVDなどだった。
嗚呼、そっち系ドライブインでしたか。
すれ違う客と目が合わせられない…。

精神的に萎えてしまったのと、走行中、チェーンから異音がすると思いバイク屋を検索して立ち寄る。
店主に軽い調整をしていただき調子が戻った。
店を営んでいるご夫婦に福岡から長距離旅行中と告げると、心配してくださりツーリング情報をたくさんもらった。
近日行くつもりの赤城の道路は、凍結が心配だったがまだ大丈夫だそうだ。
コーヒーやお菓子をご馳走になってしまったのと、今後の走行に備えてワコーズチェーンルブ¥1600を購入。
とても良くしてくださりバイクの調子も最高。群馬の印象は持ち直した。
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犬の散歩をしているところを、夕焼けが低く照らしていてとても印象的だった。

以下のドライブインにも立ち寄ったため別ページを作成。
自販機食堂
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宿は再び高崎。
宿の地階は駐車スペースとなっていて、車両にかかる雨や夜露を凌げるため地味にありがたい。
主人は40~50代の男性で、少し前までバイク乗りだったらしく嬉しそうに一緒に地図を見ながら話してくれた。
位置は昨日と同じようなところに取ったのだが、部屋の構成が全く一緒だったので驚いた。
バブル期に一斉に建てられたチェーン店が廃業して別経営になったというところか。
煙草臭くないだけ今夜は幸せになれた。

走ったルート(不定期)
ビジネスホテル→r17→r50→r17→k276→農道→k314→日清製粉ミュージアム→館林駅花山うどん→館林市民センター→分福茶釜の茂林寺→r354→k14→オレンジハット茂呂店→二輪店→k24→k142→自販機食堂→r354→ビジネスホテル


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by aroundjapan | 2018-02-13 15:11 | 2017 バイク旅 | Comments(6)  

Commented by 道産子 at 2018-02-14 00:55 x
前にブーツのことをブログに書いていましたよね。
今度は革ジャンの話も読みたいです。
Commented by aroundjapan at 2018-02-14 19:09
>道産子さん
革ジャンは安物なので今回の旅でほぼ寿命となりました。
買い替えるときに触れようと思っていましたが、なかなかいい出会いがありません。
Commented by 道産子 at 2018-02-14 19:33 x
革ジャンの寿命って、、、
どこで諦めるか難しいよね。
自分はカドヤさんのを使っていますが、日本一周しても全然平気なくらい
丈夫丈夫!
旅の後にカドヤのリフレザーに出したら綺麗になって帰ってきたので
愛着が増しています。
Commented by aroundjapan at 2018-02-15 11:31
> 道産子さん
カドヤいいらしいですね。
検討してみます。
Commented by しょうこ at 2018-02-18 23:52 x
鬼ひもかわ!
ここ美味しいですよね~また行きたい(*´p`*)
今度行く時は日清製粉ミュージアム行こうと思います。
Commented by aroundjapan at 2018-02-20 00:37
> しょうこさん
鬼ひもかわ最高でした。あそこでしか食べられないのが残念です。
私のように昼前に店で名前書いてミュージアム見て(お好み焼き粉頂いて)鬼ひもかわ開始時刻に着席できると時間に無駄がないと思います。笑

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